「君の名は」で有名になった新海誠さんの作品「秒速5センチメートル」。この作品は2007年に制作された映画で「桜花抄」、「コスモナウト」、「秒速5センチメートル」の3つの短編ストーリーで構成されています。
その「桜花抄」で何とも言えないシーンが貴樹と明里が書いた手紙がお互い渡すことができずに別れることになってしまったこと。この手紙をどちらかでも渡すことができていたのなら、また違った結末があったのではないか?と思ってしまうほどもどかしい気持ちになります。
なぜ手紙を渡すことができなかったのか、渡さなかったのか、そもそも会った時に話せたのはではないかなどいろいろ言いたいことはあるのですが、その手紙の内容気になりませんか?実は小説版にはこの手紙の内容がしっかり書いてあるのです。
そんな手紙の内容を紹介したいと思います。
「秒速5センチメートル」の手紙の内容
まずは明里が貴樹に書いた手紙の内容がこちらです。
貴樹くんへ
お元気ですか?
今日がこんな大雪になるなんて、約束した時には思ってもみませんでしたね。
電車が遅れているようです。だから私は、貴樹くんを待ってる間にこれを書くことにします。目の前にストーブがあるので、ここは暖かいです。
そして私のカバンの中にはいつもびんせんが入っているんです。いつでも手紙が書けるように。
この手紙をあとで貴樹くんに渡そうと思っています。
だからあんまり早く着いちゃったら困るな。どうか急がないで、ゆっくり来てくださいね。今日会うのはとても久しぶりですよね。なんと十一ヶ月ぶりです。
だから私は実は、すこし緊張してます。
会ってもお互いに気づかなかったらどうしょう、なんて思っています。
でもここは東京にくらべればとても小さな駅だから、
分からないなんてことはありえないんだけど。
でも、学生服を着た貴樹くんもサッカー部に入った貴樹くんも、
どんなにがんばって想像してもそれは知らない人みたいに思えます。ええと、何を書けばいいいんだろう。
うん、そうだ、まずお礼から。
今までちゃんと伝えられなかった気持ちを書きます。私が小学四年生で東京に転校していったときに、
貴樹くんがいてくれて本当に良かったと思っています。友達になれて嬉しかったです。
貴樹くんがいなければ、私にとって学校はもっとずっとつらい場所になっていたいと思います。だから私は、貴樹くんと離れて転校なんて、
本当にぜんぜんしたくなかったのです。
貴樹くんと同じ中学校に行って、一緒に大人になりたかったのです。
それは私がずっと願っていたことでした。
今はここの中学にもなんとか慣れましたが、(だからあまり心配しないでください)
それでも「貴樹くんがいてくれたらどんなに良かっただろう」と思うことが、
一日に何度もあるんです。そしてもうすぐ、
貴樹くんはもっとずっと遠くに引っ越してしまうことも、私はとても悲しいです。
今までは東京と栃木に離れてはいても、
「でも私にはいざとなれば貴樹くんがいるんだから」ってずっと思っていました。
電車に乗っていけばすぐに会えるんだから、と。
でも今度の九州のむこうだなんて、ちょっと遠すぎます。私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。
そんなことが本当に出来るのか、私にはちょっと自信がないんですけど。
でも、そうしなければならないんです。
私も貴樹くんも。そうですよね?それから、これだけは言っておかなければなりません。
私が今日言葉で伝えたいと思っていうることですが、
でも言えなかったときのために、手紙に書いてしまいます。私は貴樹くんのことが好きです。
いつ好きになったのかもう覚えていません。
とても自然に、いつの間にか、好きになっていました。
初めて会ったときから、貴樹くんは強くて優しい男の子でした。
私のことを、貴樹くんはいつも守ってくれました。貴樹くん、あなたはきっと大丈夫。
どんなことがあっても、貴樹くんは絶対に立派で優しい大人になると思います。
貴樹くんがこの先どんなに遠くに行ってしまっても、
私はずっと絶対に好きです。どうか どうか、それを覚えていてください。
純粋にまっすぐ、貴樹に対する気持ちを綴っています。離れていても明里の心の中にはずっと貴樹がいて明里を支えていた。けどこれからは一人でがんばっていかないといけない、そんな現実に懸命に向き合おうとする明里の強い思いが込められているような気がします。
次に風で飛ばされてしまい渡すことができなかった貴樹の手紙です。
大人になるということが具体的にはどういうことなのか、
僕にはまだよくわかりません。でも、いつかずっと先にどこかで偶然に明里に会ったとしても、
恥ずかしくないような人間になっていたいと僕は思います。そのことを僕は明里に約束したいです。
明里のことが、ずっと好きでした。
どうか どうか元気で。
さようなら。
2週間もかけて書いたこの手紙。貴樹がこの手紙で明里に伝えたかったのは、「明里のことが好きだ」ということではないでしょうか。ですがそれを伝えて「どうしたいのか」それを言葉にするのに2週間かかってしまったのではないかと思いました。そして結局、貴樹は好きだということをただ伝えるだけという答えをだしました。
なぜ手紙を渡さなかったのか?【考察】
ふたりはお互いに、手紙を書いたことすらも伝えることをしませんでした。
それは、桜の木の下でキスをした時に、お互い手紙の答えを知れたと思ったからではないかと考えました。
明里は、キスをした時に「前に進もう」と決意をしたのではないでしょうか。今までずっと貴樹に頼ってきた自分は捨てて、しっかり自分の足で歩いて行こう!そんな決意をしたように思えました。
一方の貴樹は、キスをしたことでお互いが両想いであることを知り、両想いなんだからもう大丈夫、住むとこが離れてしまってもうちらは思い合えると思ったのではないでしょうか。
桜の下でキスをした時、同じ気持ちを持つもの同士ではありましたが、お互いに出した答えが真逆ともいえる答えでした。ここでふたりの関係が決まってしまったともいえるシーンだったと思います。
まとめ
時間と距離がテーマになっているこの映画。キャッチコピーは「どれほどの速さで生きれば、また君に会えるか」。映画のタイトルになっている秒速5センチメートルは桜の花びらが落ちる速度と明里が言っていたように、1メートルの距離を20秒かけてゆっくり落ちていく、永遠に続くかのように。けど桜の花びらは必ず散る。そしてまた春には花が咲く。
映画の最後の踏切のシーンでは、踏切を渡り切り貴樹もようやく新たな一歩を踏み出そうと決意したように思えました。
それでは、今回は映画「秒速5センチメートル」の第一話「桜花抄」で明里と貴樹が渡せなかった手紙の内容について紹介させていただきました。ありがとうございました。
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